病院は24時間営業ではない。患者にも、家族にも、それぞれの生活がある

医療・看護のこと

病院は24時間365日動いています。

夜中でも看護師はいるし、急変すれば医師が呼ばれます。救急車も来ます。

だからなのか、ときどき病院は「24時間営業」だと思われているのかな、と感じることがあります。

夜中の0時に突然、

「○○さんは入院していますか? 会社の同僚です。病状を教えてください」

と電話がかかってきたこともありました。

もちろん、お答えすることはできません。

少なくとも私が働いてきた病院では、外部からの電話で入院の有無をお伝えしたり、ましてや病状をお話ししたりすることはありません。

病院は休むことができません。

でも、24時間いつでも、平日の日中と同じことができるわけではないのです。

病院が休みでも、患者さんの生活は続いている

土日や祝日は、外来がお休みになります。

事務の窓口も閉まり、リハビリや相談部門なども、平日と同じように動いているわけではありません。

医師も、診療科によっては当番制で出勤しています。

でも、病棟では患者さんが生活しています。

朝になれば起きる。
食事をする。
薬を飲む。
トイレに行く。
着替える。
体を拭いたり、お風呂に入ったりする。

もちろん、具合が悪くなる人もいます。

点滴が必要な人もいれば、認知症で目が離せない人もいる。

退院する人もいれば、入院してくる人もいます。

患者さんの生活は、土日だからといって止まりません。

病院の窓口が閉まっていても、病棟の中ではいつもの一日が続いています。

静かに見える休日ほど、看護師は忙しいこともある

休日の病院は、平日より静かに見えるかもしれません。

廊下を歩く職員も少なく、検査やリハビリへの移動も減ります。

でも、看護師の仕事が少なくなるわけではありません。

むしろスタッフの人数が少ない分、一人ひとりが受け持つ仕事は多くなります。

患者さんのケアをしながら入院を受け、退院の対応をし、ナースコールに応える。

座った瞬間にナースコールが鳴る。

病棟では、よくあることです。

そこへ、面会に来たご家族の対応も加わります。

「どんな状況なんですか」

「先生と話せますか」

そう聞かれれば、看護師の手はいったん止まります。

「忙しいので、今はお答えできません」とも、そう簡単には言えません。

一方で、

「おむつが足りなくなりそうです」

「洗濯物が溜まっています」

そんな連絡を家族へするのも、看護師の役割です。

そして私たちは、患者さんの生活の細かなところにも気を配っています。

たとえば、面会に来た方が同室の患者さんへ、お菓子などを差し入れることがあります。

昔は、

「同じ部屋でお世話になっていますから」

と、同室の患者さんへお菓子を配る姿もよく見かけました。

でも、今はやめていただいています。

飲み込みが悪く、食べ物を喉に詰まらせる危険がある人。

糖尿病で食事制限がある人。

心臓や腎臓の病気で、水分や塩分を制限されている人。

さまざまな患者さんがいます。

認知症があれば、自分に食事制限があること自体を理解できていないこともあります。

渡した側に悪気はなくても、思いがけず患者さんの安全に関わることがあります。

私たちは、そんなところまで気を配りながら働いています。

さらに救急当番の日には、そこへ救急入院の対応も重なります。

見た目は静かな休日でも、病棟の中は意外と慌ただしく動いているのです。

病院の中にも「暮らし」がある

患者さんの家族から、

「今日行くので先生から話を聞きたい」

「今から退院できますか」

「家族がそろうのが日曜日なので、その日に説明してほしい」

そんな希望を聞くことがあります。

家族からすれば、それも当然なのだと思います。

仕事をしていれば、平日に病院へ来るのは簡単ではありません。

小さな子どもがいたり、介護をしていたり、それぞれに事情があります。

特に一人暮らしの高齢者では、家族が遠方に住んでいることも珍しくありません。

ただ、病院側にも時間の流れがあります。

休日は担当医が不在だったり、相談員やリハビリスタッフが休みだったりします。

必要な手続きが進められないこともあります。

病院は24時間動いています。

でも、それは「いつでも同じサービスが受けられる」という意味ではないのです。

平日に働くようになって、見えるようになったこと

私自身、以前は土日も勤務していました。

今は仕事が変わり、基本的に平日の勤務になりました。

退院支援の仕事をするようになって、今度は別の難しさが見えてきました。

私が勤務しているのは平日です。

でも家族に連絡すると、

「仕事中なので電話に出られません」

「平日は休めません」

「病院へ行けるのは土日だけです」

と言われることがあります。

それも、とてもよくわかります。

家族にも仕事があり、生活があります。

けれど、家族が動ける土日は、病院の相談窓口や施設、ケアマネジャーなどがお休みのことも多いです。

退院先を決めるために家族と相談したい。

施設を探したい。

介護保険の話をしたい。

転院について説明したい。

そう思っても、お互いの動ける時間が合いません。

平日に動く医療や福祉の仕組みと、平日は仕事をしている家族。

その間を調整する難しさを、今まで以上に感じるようになりました。

「家族なのだから平日に来てください」では済まない

医療者側から見ると、

「大事な話だから、仕事を休んで来てほしい」

と思う場面もあります。

でも、簡単に仕事を休める人ばかりではありません。

一日休めば収入が減る人もいる。

職場で代わりの人を探さなければならない人もいます。

遠方なら、移動だけで一日かかることもあります。

医療者には医療者の事情があり、家族には家族の事情があります。

どちらが悪いという話ではありません。

だからこそ、退院支援は難しいのだと思います。

患者さんの病気だけを見ていればいいわけではありません。

その人を取り巻く家族の生活まで考えなければ、退院後の暮らしは作れないからです。

病院は24時間動いている。でも、24時間営業ではない

病院には、患者さんの生活があります。

その生活を支えるために、夜中も休日も働いている人がいます。

一方で、病院の外には家族の生活があります。

仕事があり、家庭があり、それぞれの事情があります。

患者さん。
家族。
医療者。

それぞれが違う時間の中で生活しています。

退院支援の仕事をするようになって、私はその「時間のズレ」を調整することも、医療のひとつなのだと感じるようになりました。

病院は24時間365日動いている。

でも、コンビニのように24時間いつでも同じことができる場所ではありません。

そして家族にも、「患者さんの家族」という役割だけではない、一人の人間としての生活があります。

お互いの事情を少しずつ知ることができたら。

病院で過ごす時間も、退院してからの生活も、もう少しうまくつながっていくのではないかと思っています。

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